「それ変だよ」と言えない

友達や家族に「それ変だよ」と言えない。変な服を着ていても、ダサい靴を履いていても、「それ変だよ」と言えない。破れているとか、色合わせが完全におかしいとか、TPOに合っていないとかいった場合は指摘できる。誰の目から見ても明らかに不適切であるとわかる場合だ。しかし、私がダサいと思う、それを根拠に口出しすることはできない。いくら多くの人がダサいと感じるであろうことを予想できたとしても、やはり「変だよ」とは言えないのだ。
 
もし本人が「これ変?」と聞いてきたらどうだろう? やはり「変だよ」とは言えない。せいぜい「私はこっちの方が好きかな」と言うくらいだ。だって、本当に変だと思うなら、最初から身につけないだろう。そこまで変じゃないと思っているから実際に身につけているわけで、それを「変」と言ったら、その人の感性を否定することになってしまう。
 
本人のためを思うなら、「変」とはっきり指摘すべきだとは思う。それでも、私の感性が絶対というわけではないし、その商品を買ったということは、彼・彼女はそのアイテムに何らかの価値を見い出しているわけだ。それを「変」などと言えるだろうか。
 
困ったことに多くの場合、提示されるスタイルはとても微妙なラインだ。「変」と指摘するほどではないが、イケてるわけでもない。だからこそ自信が持てず「これ変?」と聞くのか。
 
「それ変だよ」以外の言葉で指摘することも可能だが、結局何と言おうとも「それ変だよ」というメッセージとなるのだ。その結果、相手は腹を立てる。そりゃそうだ。「変」と言われて喜ぶ人はいない。ダサい、イケてない、微妙、私にはとても言えそうにない。そのことに多少の罪悪感を抱きつつも、私は口をつぐむ。言うべきなのか、別に言う必要はないのかわからないまま。
  
そもそも「変」って何だよ。